整形外科

対応している病気と治療方針

• 変形性股関節症

• 変形性膝関節症

• 半月板損傷

• 膝前十字靭帯（ACL）損傷

• 治療・サポート体制

• 診療体制

• 大切にしていること

• 目指す未来

あなたの症状に、最適な治療を

京都武田病院の整形外科では、股関節外科、膝関節外科、スポーツ整形外科の専門領域を軸に、多様な疾患に対応しています。

■関節外科（股関節・膝関節）

変形性股関節症

変形性股関節症とは、加齢などの要因により股関節の軟骨がすり減り、股関節に強い痛みが生じる病気です。進行すると痛みも大きくなり、日常生活に大きな影響を及ぼすようになります。主に発育性股関節形成不全（DDH: Developmental Dysplasia of the Hip）が原因で、生まれつきの骨盤形態異常が関節に負担をかけます。70～80代で発症する方が多いですが、10～20代でも痛みが出ることはあります。その他、一次性（原因不明）の変形性股関節症も存在しますが、多くは骨盤の構造的問題が背景にあります。初期には軽い違和感や動き始めの痛みが現れます。進行すると、歩行時や階段昇降時の痛みが強くなり、関節の変形が進むと姿勢の傾きや歩行困難を引き起こします。重症例では日常生活動作（ADL）に大きな制限が生じ、生活の質（QOL）が低下します。

変形性膝関節症

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで生じる疾患で、立ち上がり動作や階段昇降時の痛みが特徴です。加齢、過度な負荷、肥満、靭帯損傷後など、様々な原因が関わります。初期段階では朝方の硬さや軽い痛みが見られ、進行するにつれて安静時の痛みや夜間痛が生じます。膝の曲げ伸ばしが困難になると、歩行距離の制限につながり、QOLが著しく低下します。

治療方法

初期関節症の治療

非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）や関節内注射（ヒアルロン酸注射やステロイド注射）で痛みを緩和します。同時に理学療法で筋力や可動域を維持するようにします。体重管理やライフスタイルの改善も重要なポイントです。膝関節の場合、初期関節症においてもアライメント（O脚、X脚など骨の配列）によっては高位脛骨骨切り術（HTO: High Tibial Osteotomy）の適応となる場合もあります。

進行期関節症の治療（膝関節）

人工膝関節手術（人工膝関節単顆置換術：UKA、人工膝関節全置換術：TKA）の適応がでてきます。
変形性膝関節症が進行している場合でも、患者さんの年齢や活動度により、人工膝関節置換術以外の選択肢として高位脛骨骨切り術（HTO: High Tibial Osteotomy）を検討します。この手術は、膝の内側が摩耗している内反変形（O脚）に対して特に有効な治療法です。脛骨（すね骨）の上部に切れ込みを入れ、プレートとネジで固定します。アライメントを矯正することで、膝関節にかかる荷重軸を正常に戻し、損傷していない外側の軟骨へ負荷を移行させます。
HTO手術の特徴は、低侵襲な関節温存手術で、将来的に人工関節手術が必要になった場合も対応が比較的容易な点です。内反変形が強く、活動性が高い患者さんに適しています。手術後は骨の癒合期間が必要となりますが、適切なリハビリにより、歩行、階段昇降だけでなく、重労働やハイインパクトスポーツへの復帰も期待できます。

末期関節症の治療

人工関節手術（人工股関節全置換術：THA、人工膝関節単顆置換術：UKA、人工膝関節全置換術：TKA）が主な選択肢となります。手術では損傷した関節を人工関節に置き換え、機能回復を図ります。骨盤の傾きや足の長さの不均衡を手術で是正し、姿勢改善を実現します。手術翌日からリハビリを開始し、1〜3週間程度で基本的なADL（歩行、階段昇降など）が可能なレベルを目指します。
当院では、膝関節手術の実績が豊富で、専門医が手術とリハビリを一貫して管理して、個々の患者さんの状態に応じたきめ細かなケアを提供しています。術前・術後のレントゲン画像や姿勢比較を用いて、治療効果を丁寧に説明します。また手術翌日からリハビリを開始することで、早期回復を促進するのも当院の特長です。術後ヶ月でゴルフや旅行などのレクリエーション活動が可能になった患者さんも多数います。

■スポーツ整形外科

半月板損傷

半月板は、膝関節の内側（内側半月板）と外側（外側半月板）に存在するC字状の線維軟骨で、主に衝撃吸収（クッション機能）・関節の安定化・関節軟骨の保護といった重要な役割を担っています。
半月板損傷はサッカー、バスケットボール、ラグビー、テニス、スキーなど、切り返し動作や膝のひねりが多いスポーツで生じやすく、ACL損傷と同時に発生するケースも少なくありません。また、スポーツ外傷だけでなく、加齢による変性（摩耗）によっても損傷が生じることがあります。
典型的な受傷機転としては、膝をひねった際に強い痛みが走り、その後に膝関節の引っかかり感や可動域制限、腫れが出現するのが特徴です。特に、損傷した半月板の断片が関節内で挟まり、膝が完全に伸びなくなる「ロッキング」と呼ばれる状態が起こることがあり、早期の診断と治療が必要となります。適切な治療を行わずに放置すると、関節軟骨が摩耗し、将来的な変形性膝関節症のリスクが高まります。

治療方法

急性期の対応（受傷直後）

膝の痛みや腫脹が強い場合、まずは**RICE療法（安静・冷却・圧迫・挙上）**を実施します。診断は、理学的検査（McMurray test、Apley testなど）およびMRI検査を組み合わせて行い、損傷部位（内側・外側）、損傷形態（縦断裂、横断裂、バケツ柄状断裂、変性断裂など）を評価します。

保存的治療（非手術）

小さな損傷や痛みが軽度の場合、まず保存療法を行います。
特に、変性型半月板損傷では保存治療が有効な場合が多く、痛みの軽減・可動域改善・大腿四頭筋やハムストリングの筋力強化を軸にリハビリを進めます。適切な理学療法と運動指導により、日常生活や軽度のスポーツ復帰が可能になるケースもあります。

手術治療（関節鏡視下手術）

半月板の損傷部位や年齢、スポーツ復帰希望レベルを踏まえ、以下の術式を選択します。

• 半月板縫合術（修復術）：血流のある部位（Red-Redゾーン、Red-Whiteゾーン）に生じた損傷では、可能な限り縫合し半月板を温存します。半月板の温存は、長期的に関節軟骨を保護し、変形性関節症の発生を抑えるうえで非常に重要です。
• 半月板部分切除術（トリミング）：縫合が困難な損傷（高度変性、複雑断裂など）の場合、損傷部のみを整形し、引っかかりを解消します。術後は比較的回復が早く、日常生活復帰もスムーズです。

術後のスポーツ復帰までの期間は、術式により異なりますが、部分切除術では約8～12週間、縫合術では約3～6ヶ月を要します。当院では手術後早期からリハビリテーションを開始し、可動域の回復、腫脹の軽減、筋力増強、バランス機能改善を段階的に行います。

競技復帰プログラム

半月板手術後のスポーツ復帰は、損傷部位や術式によって異なります。当院では、過度な負荷による再損傷を防ぎつつ、安全かつ効率的な競技復帰を目指し、次のステップに沿って進めます。

当院での特徴

半月板損傷は、競技力への影響だけでなく、将来の膝の健康を左右する重要な疾患です。当院では、関節鏡視下手術により、可能な限り半月板を温存する治療を重視しています。患者様の年齢、活動レベル、競技種目、職業背景を踏まえた個別性の高いリハビリテーションを提供します。

術後リハビリは、スポーツ外傷に精通した理学療法士が、スポーツドクターと密に連携し、競技復帰に向けてしっかりとサポートいたします。また、近隣クリニックからご紹介いただいた患者様については、紹介元クリニックと連携し、術後リハビリを分担して行う体制を整えております。

膝前十字靭帯（ACL）損傷

前十字靭帯（ACL: Anterior Cruciate Ligament）は、膝関節の中心部にある靭帯で、膝の安定性を維持するために極めて重要な構造です。ACL損傷は、バスケットボール、サッカー、スキーなどの回旋動作が多いスポーツで多く発生し、非接触損傷（相手選手との接触がない）が約70～80%を占めます。典型的には、ジャンプ着地時や急速な方向転換時に膝が内側に入ると同時に、膝が過度に曲がることで発生します。

ACL損傷の症状は、受傷直後に「ポップ音」（引き裂かれるような音）を聞くことがあり、その直後から膝が腫脹し、激しい痛みが生じます。急性期の症状が改善した後でも、膝に「ぐらつき感」が残り、スポーツ復帰時に膝が不安定になる感覚が続くのが特徴です。適切な治療なしに放置すると、半月板や関節軟骨が二次的に損傷するリスクが高く、後年の変形性膝関節症へと進展する可能性が高まります。

治療方法

急性期の対応（受傷直後）

膝関節の腫脹と痛みを管理するため、RICE療法（Rest：安静、Ice：冷却、Compression：圧迫、Elevation：挙上）を実施します。同時に膝の安定性を評価するため、Lachman testやpivot shift testなどの理学的検査、ならびにMRI検査により、ACLの損傷を確定診断します。

保存的治療

膝関節の腫脹が引いた後、段階的なリハビリテーションを開始します。膝周辺の筋力（特に大腿四頭筋とハムストリング）を強化し、膝の安定性を代償的に高めることで、スポーツ復帰を目指します。しかし、軽微な損傷以外では、保存的治療のみでは膝の動的安定性が十分に回復しないため、スポーツ復帰時に再損傷のリスクが残ります。

手術治療（関節鏡視下ACL再建術）

前十字靭帯の完全断裂、または高い競技レベルでの早期復帰を望む患者さんには、関節鏡視下ACL再建術を推奨します。当院では、患者さん自身の腱組織（ハムストリング腱、または膝蓋靱帯）を採取して、破断したACLに代わる新しい靭帯として移植する自家腱移植法を採用しています。この手術は最小限の侵襲で、膝の前方安定性を回復させることができます。

手術後は、膝の状態によって異なりますが、通常6～9ヶ月の段階的リハビリテーションを経て、競技レベルでのスポーツ復帰が可能になります。当院では、手術直後から始まる理学療法により、腫脹や痛みの管理、関節可動域の回復、筋力増強を段階的に進めます。術後3～4ヶ月で日常生活動作がほぼ完全に回復し、6～9ヶ月で元の競技への復帰が期待できます。

競技復帰プログラム

各段階では、本当に競技復帰が安全かどうかを判定してから、次のステップへ進みます。

当院での特徴

前十字靭帯損傷は、若年アスリートに限らず、社会人スポーツを楽しむ壮年期の方にとっても、その後の生活や活動レベルに大きな影響を与える重大な外傷です。当院では、関節鏡視下手術による前十字靱帯再建術を行い、患者様一人ひとりの年齢や生活背景、復帰を目指すスポーツレベル、活動レベルに応じたリハビリテーションを提供しています。リハビリテーションは、スポーツ外傷に精通した理学療法士が中心となり、スポーツドクターと密に連携しながら進めます。競技種目ごとの専門チーム体制こそありませんが、これまでの症例経験を活かして、できる限り競技特性を考慮した機能回復をサポートします。

また、近隣クリニックからご紹介いただいた患者様については、紹介元クリニックと連携し、術後リハビリを分担して行う体制を整えております。

治療・サポート体制について

ここにしかない専門性と技術

当院の最大の特徴は、「患者一人ひとりに最適な専門治療」と「早期の社会復帰支援」にあります。
股関節・膝関節の人工関節手術においては、各分野に精通した専門医が在籍し、術後翌日から積極的なリハビリを開始します。これにより3週間で日常動作の自立、1ヶ月でゴルフやダンスなどの趣味に復帰される方も少なくありません。
スポーツ整形外科では「怪我をする前より良い状態」を目指して、最新の治療法と競技復帰支援プログラムを導入しています。

診療体制

チームで支える、個別対応の医療―多職種連携の診療体制

気持ちよく治療に取り組める環境作りも、京都武田病院の整形外科が重視するポイントです。診療科・リハビリ科・看護部門・相談員が緊密に連携して、ご本人やご家族の希望や生活背景を重視した個別治療計画を立案・実施。専門医のきめ細かな診断・治療、理学療法士・作業療法士によるリハビリの他、医療ソーシャルワーカーが在宅復帰や日常生活のサポートも担います。安心・快適な空間を維持し、初診からリハビリ、社会復帰後のアフターケアまで一貫して「いつも気持ちいい」診療環境を提供します。

私たちが大切にしていること

あなたらしい笑顔を取り戻すために

「痛みからの解放」や「できなかったことができるようになる」喜びは、全ての患者さんの笑顔に直結します。当科は診療プロセスそのものに「寄り添い」と「思いやり」を大切にし、診療前の不安払拭と治療後の満足度向上をテーマに掲げています。たとえば丁寧な声掛け・説明や、術後の丁寧なフォローアップはもちろんのこと、患者さんが「ここで診てもらって本当によかった」と思える医療の提供を目指し、細やかな心配りを重視。患者一人ひとりの「その人らしい笑顔」を取り戻すことを、オーダーメイドの治療とチーム力で実践しています。

私たち目指す未来

痛みのない人生へ

「痛みのない人生を、すべての人に」―それが京都武田病院整形外科のビジョンです。今後は、より早期の疾患発見と負担の少ない先端治療、スポーツ医学領域の高度な技術導入、そして地域包括ケアにおける役割拡大へ挑戦します。人工関節手術やスポーツ整形外科領域の難治疾患でも、従来の枠にとらわれない新しい治療法や診断技術を積極的に取り入れて、診療精度向上も進めています。地域のかかりつけ医や福祉機関と連携して、どの世代にも「できる、楽しめる」という希望を届けることを目指しています。